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November 25, 2005
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ゴットリープ・ヘルンバインGottfried Helnwein
この本を読んで何年もたってから、まさにこの女の子に偶然出会ったときは、言いようのない驚きで頭の中が混乱した。『写真都市』(伊藤俊治著)という本で偶然に見つけたのだ。ゴットリープ・ヘルンバインGottfried Helnwein(1948-)というオーストリア生まれのアーティストによるBeautiful Victim II という1974年の作品。
Beautiful Victim II
watercolor on cardboard, 1974, 102 x 73 cm / 40 x 28''
2005年 11月 25日
夢を走る
何年ぶりかで日野啓三の『夢を走る』を読んだ。
彼の短編集のなかでは一番好き。
7つの作品が収められていて、どれも素晴らしいのだが、なかでも好きなのが『星の流れが聞こえるとき』。
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何かに追われながら東京の片隅で逃げるようにして生きている若者が、偶然7、8歳の女の子と出会って不思議な交流をする。女の子は白いワンピースを来て、手足や頭を繃帯でぐるぐる巻いている。女の子の視力は弱ってきているが、聴力が抜群に冴えていて、ミミズやトカゲの動きがわかる。定期的に会うようになったふたりは、風の音、砂の音などが録音されたテープを一緒に聞くようになる。というのがあらすじなんだけど、こんなんじゃ、残念ながらこの作品の素晴らしさはぜんぜん伝わらない・・・。
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読むたびに、この世には見えるものだけが存在するのではなく、聞くこと感じることしかできない何かが存在するのだ、という日野啓三のメッセージに強く心を動かされる。
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この本を読んで何年もたってから、まさにこの女の子に偶然出会ったときは、言いようのない驚きで頭の中が混乱した。『写真都市』(伊藤俊治著)という本で偶然に見つけたのだ。ゴットリープ・ヘルンバインGottfried Helnwein(1948-)というオーストリア生まれのアーティストによるBeautiful Victim II という1974年の作品。
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日野啓三が『星の流れが聞こえるとき』を発表したのが1984年だから、彼はヘルンバインの絵に影響されて、この作品を書いたのではないかと思い、どこかで日野啓三がヘルンバインについて言及していないか探してみたのだが見つからなかった。今となっては本人に確認することもできない・・・。

TLさんへ:
「ああ、私は世界が好きだったなあ」という日野啓三の言葉は『遥かなるものの呼ぶ声』(中公文庫)の文庫版あとがきにありますよ。
かつて映画館で、映画が始まる前にこの言葉を読んで、私は人目もはばからず泣きました。涙が止まりませんでした。過去形で書かれているというところに、病魔に冒されてもう旅行はできないという現実が凝縮されていて、言いようのない深い悲しみに襲われたのです。一生忘れられない言葉ですね。
比較表素晴らしいです!
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